1: YG防衛軍 ★@無断転載は禁止 2016/11/24(木) 18:57:42.98 ID:CAP_USER9
強いチームには立ち返る場所がある。

 1年でのJ2復帰を至上命題とし、かつてJ1でタイトルを手にした大分がJ3でチームの再建に取り組んだ。率いるのは今季から指揮を執る片野坂知宏監督。クラブは「走り切る」「球際で身体を張る」「攻守の切り替えを速くする」というサッカーでは当たり前のことを徹底することを掲げ、これを実現できる指揮官として片野坂監督を招聘したのだ。新監督はクラブの求めるコンセプトを浸透させ、マイボールを大事にして、しっかりポゼッションするサッカーも着々と植え付けた。
 
 迎えたJ3での再スタートは、開幕3連勝するものの、その後は勝ったり負けたりを繰り返す。J3では格上となる大分に対し、対戦相手は一泡吹かせてやろうと戦略を練って来る。序盤戦はそうした相手をはね返す力はなく、1年でJ2に復帰できるような空気は感じられなかったというのが正直なところだった。
 
「結果が出ていない事実を受け止め、修正しなければいけない。パスの出し手と受け手だけでなく、3人目の動きも含めたコンビネーションを高めないと」と厳しい表情で松本昌也が語れば、今季から加入したキャプテンの山岸智は「勝ちたい気持ちが焦りにつながっているのかも」と頭を抱えた。悪い流れを一掃しようと個々は奮闘するものの、肝心なところでミスが出る。徐々に得点が奪えなくなり、守備も我慢できず失点を許す悪循環を繰り返した。
 
「大切なのは、上手くいっている時は自然と良い流れが生まれてくるものだけど、試合中やシーズン中に流れが悪くなる時は絶対にある。その時に、立ち返る場所があるかどうか。強いチームにはそれがある。僕はその場所をしっかり築いていきたい」
 
 思うように結果が出ないと次々に選手を入れ替えたり、システムやチーム戦術を変えて、逆に墓穴を掘るといった例が少なくない。だが、コーチ時代に広島やG大阪で数々のタイトルを手にした経験を持つ指揮官は、辛抱強かった。
 
 波に乗れない序盤戦を乗り越え、6月の声を聞くころにはチーム状態は上向き、着実に勝点を積み重ねていくようになった。
 
「いくつかの要因があるが、僕がチームのこと、選手のことを理解しはじめた、逆に選手たちも僕がどういう監督で、どういう指導法、ゲームプランで戦うのか理解したんでしょうね。毎日の練習の積み重ねで、一人ひとりが自分の役割を理解し、状況に応じた判断と質が向上していった」(片野坂監督)
 
 パスワークとカウンター、速攻と遅攻を上手く使い分けられるようになったのは大きかった。相手がパスをつなげば前線からプレッシャーを懸け、ロングボールを多用してくれば中盤の枚数を厚くしてセカンドボールを拾う。試合の状況に応じた判断が、対戦相手より上回るようになった。

「徹底的に守備を強化したわけでもない。一番求めたのはポジショニング」

 ターニングポイントとなったのは、19節・栃木戦の天王山だった。強固な守備網を築く首位を相手に決定機は作ったがゴールが遠かった。アディショナルタイムに失点し、痛恨の黒星を喫す。残り11試合で勝点差が9に広がる危機的状況に直面し、「リスクを負って攻撃するチームが多かったので、攻撃で上回るより粘り強い守備で勝点を積み重ねることを考えた」と片野坂監督。守備面の建て直しを図った。
 
「僕のなかでは特に守備を徹底的に強化したわけでもない。ただ、一番求めているのはポジショニング。そこは意識させました」
 
 相手の攻撃を受ける際に、誰がどこにいるか分からないような陣形ではなく、ボランチはボランチ。CBはCBのいるべきところにしっかり戻ること。ポジションが間違っていると無駄な体力を使わなくてはいけない。そこを軽減すれば、攻撃にも良い影響が出てくる。守備のための守備ではなく、いかに良い形で攻撃につなげられるかを意識させた。
 
 8月のリーグ中断期間と重なったことも幸いし、戦術を徹底できた。復調のキーパーソンの出現もあった。最後尾から的確なコーチングと徹底したリスク管理で守備陣を束ねたGK修行智仁。小柄だが無尽蔵のスタミナとボール奪取力に長けたボランチの姫野宥弥が攻守に渡る献身的な働きで、新たな戦術を具現化した。もちろん修行と姫野のふたりでチームを牽引したわけではないが、「やることが明確になった」(片野坂監督)のは事実だ。
 
 興味深いデータがある。開幕から19節まで大分の失点は18だった。つまり1試合平均で約1失点。修行、姫野が入った20節から最終節までの11試合での失点は6。1試合平均の失点がそれまでのほぼ半分となっている。
 

続きを読む