1: YG防衛軍 ★@ 2016/09/13(火) 17:49:08.04 ID:CAP_USER9

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単純なドリブル技術なら久保以上の選手は日本に何人もいるが……。

 いよいよFC東京でのトップチーム登録(2種登録)が秒読みとなった久保建英。ともすれば、“バルサ育ち”というイメージだけで語られてしまいがちだが、そのプレースタイルやパーソナリティはいかなるものか。小学生時代から彼の動向を追いかけてきたライターが分析する。
文:川端暁彦(フリーライター)
 
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 リオネル・メッシのようでいて、しかしメッシではない。
 
 アンドレス・イニエスタを想起させる瞬間もあるが、本質的にはやはりストライカーである。
 
「天才」という言葉で簡単に片づけられがちな選手だが、久保建英が少々変わった感覚の持ち主であることは間違いない。
 
 FIFAの決定によってバルセロナ退団を余儀なくされ、久保が日本へ帰って来てから1年半が過ぎた。
 
 帰国当初にプレーしたFC東京U-15むさしでは主に2シャドーの右に入ったが、当時からなにより目を惹いたのはボールを受ける動きの巧緻性だった。運動「量」という意味では、むしろ凡庸な部類に入ると思うが、相手2ライン(DFとMF)の間に瞬間的に落ちて受ける感覚は絶妙そのもの。誰より目立つ存在だっただけに、対戦相手も厳重に久保を監視するのだが、まさに「ひょいっ」という表現が相応しい最小限の動きから、前を向いてボールを受けるオフ・ザ・ボールの質は恐ろしく高かった。
 
ただ、こうした特長は小学生時代に観た時から備わっており、バルサで教え込まれたというよりは、元来持っている感覚なのだろう。
 
 そうして前を向いた状態から繰り出すドリブルは軽快で、鋭さもある。背筋を伸ばして視野を確保し、相手DFの対応を観察しながら緩急を織り交ぜて抜いていく。
 
 しかし、おそらく単純なドリブルのテクニックなら、久保以上の選手は日本に何人もいるだろう。ただ、彼のドリブルはコース取りがとにかく上手い。目の前の敵を抜くことに特化したドリブル(日本の中学生のドリブラーはこのタイプが多く、高いレベルになるとサイドでしか生きない)ではなく、スペースを見ながらのドリブルで、あっさりとボールを危険地帯まで運んでしまうのだ。
 
 見えているから、抜きにかかったあとでもパスの選択肢が残っている。それもまた、対峙するDFにとっては「怖さ」を感じる部分に違いない。

ノーゴールに終わった6月の国際大会では涙を見せた。

 こうしたドリブルを繰り出せる選手を思い出そうとしてもなかなか出てこないのだが、数少ない類似タイプが、香川真司だろう。彼のドリブルには、高校時代から同質の「怖さ」があった。サイドではなく、敵に囲まれるリスクの高い中央で脅威を与えられるドリブル――。思えば香川もまた、ボールを引き出す感覚に抜きん出たものを持っていたし、その意味でも似ている部分は少なくないのかもしれない。
 
 両者に共通する「怖さ」が生まれるのは、それがシュートという選択肢につながっていくドリブルだから、とも言える。そして久保の本質はあくまでストライカーだ。敵2ライン間に入って味方の縦パスを引き出し、崩しの起点になって終わりではなく、そこからゴールを奪う点にこそ久保の真骨頂とこだわりがある。
 
 印象的だったのは、今年6月に行なわれたU-16インターナショナルドリームカップでの一幕だ。大会を通じてゴールに絡む仕事はしていた久保だが、結局はノーゴール。ひとつ年下というエクスキューズを挟めば及第点と言えるプレー内容だったが、本人は大会後に涙を見せた。結果についてハッキリと「満足できない」と断じ、大勝にも険しい表情を崩さなかった。このメンタルこそ、まさに点取り屋のそれだろう。
 
 シューティング技術の高さ、ゴール前での冷静さが生み出す決定力は、大会得点王に輝いた今夏のクラブユース選手権(U-18)でも証明済み。さらにU-16日本代表でも、久保が貴重な得点源であることは誰もが認めるところだ。利き足とは逆の右足のシュート練習にも熱心に取り組んでおり、その精度は確実に向上中。もはや左足を封じるだけでは止められない存在になりつつある。
 
 では、課題はなんだろうか。その問いに対して本人は、一貫して「フィジカル」という言葉を口にする。当たり負けしない肉体的な強さ、あるいはスタミナ面が不足していることは、自身も認めている。
 
 もっとも、高校生の中に混じっているから目立つのであって、中学生の大会に出ていれば、そうそう当たり負けすることもないはずだ。身体の使い方は巧みで、ボディバランスもいい。身長が少しずつ伸び、体格も徐々に変わってきた。本人に課題としての自覚がある以上、余計な心配は要らないのかもしれない。

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