1: 2020/06/05(金) 05:41:55.20 ID:7ccoZBHq9
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ポルトガルを代表する名門、FCポルトの「10番」が敵地のピッチに立つことはなかった。ベンチで出番を待つリザーブのなかにも名前を連ねていない。約3カ月に及んだ中断期間をへて待望の再開を迎えた一戦を、日本代表でも「10番」を背負うMF中島翔哉は自宅で見届けていた。
 新型コロナウイルスの影響を受けて、3月8日を最後に中断されていたポルトガル1部リーグ、プリメイラ・リーガが現地時間3日に再開。2シーズンぶり29度目の優勝を目指す首位のポルトは敵地でFCファマリカンに1-2で競り負け、今シーズン3つ目となる痛恨の黒星を喫した。

 昨夏にアル・ドゥハイルSC(カタール)から加入した中島が、プリメイラ・リーガでベンチ外となるのは通算6度目となる。年明け早々に3試合連続で外れたときは右足の故障が原因だったが、今回はシーズンが始まった直後に外れた2試合と同じく、けがとは別次元の理由があった。

 スポーツ紙の『A BOLA』を含めたポルトガルのメディアは、ファマリカン戦前日の段階で中島の欠場を伝えている。報道によれば5月中旬に体調を崩した夫人を看病するために、中島は全体練習の初日に参加しただけで離脱。自宅で個人練習トレを積みながら、夫人に付き添っているという。

 自宅での個人練習はイコール、国内がロックダウンされていた5月上旬までの状態に逆戻りしたことを意味する。全体練習を積み重ねてきたチームメイトたちとはコンディション面で大きな差が生じていて、ポルトのセルジオ・コンセイソン監督もファマリカン戦前日の会見でこう言及していた。

「ナカジマはグループとともに練習を積めていない。なので、彼は明日のグループに入っていない」

 夫人は呼吸器系の疾患に罹ったと報じられている。全土で発令されていた非常事態宣言が先月3日から災害事態宣言に切り替えられ、経済的活動や社会文化活動などに課されていた制限が段階的に緩和されていた時期だったが、ポルトガル国内で新型コロナウイルス感染が終息したわけではない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/67f55156151a38971c6cbb16bd02c81dec084363

プリメイラ・リーガでは練習再開に際して、すべての選手に新型コロナウイルス感染の有無を調べる検査を実施している。
それでも全体練習の強度が徐々に上がり、公式戦再開へ向けて接触プレーなどが解禁されてくれば、その分だけ見えざる敵の脅威にさらされるリスクも高まってくる。

 すでにリーグ戦が再開されている韓国やドイツを含めて、世界中のサッカー選手たちが不安を抱えている。

 53歳のFW三浦知良(横浜FC)が、3日の練習再開後に漏らした「自分が感染しているんじゃないか、感染させてしまうんじゃないか」は国境を越えて共通する本音と言っていい。

 そして、実際に感染してしまった場合、同居する家族へ2次感染させる確率が必然的に高くなる。
FC東京からポルティモネンセSCへ移籍する直前の2017年8月に入籍した、最愛の夫人が呼吸器系に不調を訴えている状態ならば、中島がリスクを取らない行動を選択したこともうなずける。


中島がサッカーより家族を優先させるのは、今回が初めてではない。
新天地ポルトでデビューを果たした直後の昨年8月中旬。
第一子となる長女の出産に立ち会うために一時帰国した中島は、宿敵ベンフィカ戦を含めたプリメイラ・リーガの第3節と第4節を立て続けに欠場している。

 シーズンが始まった直後にベンチ外となった2試合とは、言うまでもなくこの時期を指す。
しかも、9月5日のパラグアイ代表との国際親善試合(県立カシマサッカースタジアム)に臨む、
森保ジャパンに招集されていた中島はそのまま日本に残らず、8月下旬に再びポルトガルへ飛び立っている。

 現地時間9月1日のヴィトリア・ギマランエス戦に間に合わせるためだった。
時差ぼけや長距離移動などが考慮されて無念のベンチ外となり、ホームのエスタディオ・ド・ドラゴンのスタンドで勝利を見届けた中島は慌ただしく再帰国。日本代表合宿に合流した直後に、こんな言葉を残している。

「出産は命懸けだと思いました。子どもが産まれる前も産まれた後も、ずっと一緒にいるのが家族だと思っています。僕にとって、どこをどう探しても家族よりも大切な存在はありません」


2024年夏までの5年契約を結び、契約解除金として8000万ユーロ(約98億7500万円)
が設定された期待の新戦力が家族の事情でいきなり離脱する事態に、コンセイソン監督も理解を示していた。

「フットボールは人生においてとても大切だが、人生そのものではないし、もっと重要なものがある。
ナカジマが人生のなかで重要な時間を過ごすために、チームから離れる許可を与えている」

 夫人と長女がポルトガルに到着し、家族で生活をスタートさせた直後の昨年12月16日に行われたトンデラ戦では、
中島はプリメイラ・リーガで2度目の先発にして初めてフル出場。
その後も試合に絡む時間が増えてきたなかで、今年2月に出演したスカパー!の番組ではこんな言葉を残している。

「監督から『家族が来てからいいプレーをするようになった』と言われたんです」

 過去の経緯を振り返れば、今回もクラブの許可を得た上で中島は自宅での個人練習に切り替えたはずだ。
中断前の一戦となったリオ・アヴェ戦で5度目の先発を射止め、
アシストを記録した中島を戦力としてカウントしはじめているからこそ不在は痛い。
それでも、体調が思わしくない夫人とまだ9カ月の長女を大切にしたい中島の胸中を尊重するからか。指揮官は前日会見でこんな言葉も残している。


「ナカジマの不在については、クラブが最善の形で対処する。それ以外に何かを言うことはない」

 自宅での個人練習が2週間あまりに及んでいる状況を考えれば、
7月末までに9試合を戦うプリメイラ・リーガで中島が復帰することは難しいかもしれない。
ただ2位のベンフィカと勝ち点1ポイント差で再開に臨んだポルトを取り巻く状況は、ファマリカン戦で喫した黒星で風雲急を告げつつある。

 ポルトガルと日本とを慌ただしく行き来した昨夏の行動が物語るように、我を押し通すタイプに映る中島の内側には強い責任感が脈打っている。
自らが下した決断とポルトが直面する苦境のギャップに、思い悩むような事態を回避させたいからか。
ポルト側はブラジル在住の代理人をポルトガルへ呼び、心のケアを含めた中島の今後へ、ともに対処していく青写真を描いている。


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