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出場わずか4分。香川真司の扱いに、なぜかドイツメディアが大騒ぎ

ドイツ杯準々決勝シュツットガルト対ドルトムント戦は、3-1でドルトムントが勝利を飾った。

  その3日前のヘルタ・ベルリン戦で香川真司がベンチ外になったことは、ドイツメディアから大きな注目を浴びた。試合直後の地元紙ルールナハリヒテンのウェ ブ版ではトップページを飾り、キッカーのウェブ版でもトーマス・トゥヘル監督と香川の2ショットが掲載された(両者の関係が良好であることを強調したもの と思われる)。また翌日のキッカー本誌でも、試合に関するレポートページで掲載されていたのは香川の写真だった。

 トゥヘルが「香川との間に何もない」と発言したのは、もしかしたら関係が悪くなったせいでベンチを外れたのではないかという憶測があったからだし、同じ く「(フィールドプレーヤーは)16人しか選べない」という発言がわざわざ取りあげられたのは、香川が選ばれないことへの疑問の多さを示すものだった。

 面白いのは、一連の報道がすべてドイツメディア発であることだ。通常、日本人選手についての報道は、記者会見やミックスゾーンで日本人記者が聞いたこと や、日本での記事が翻訳されて、めぐりめぐってドイツで報道される。そして日本メディアがそれをさらに翻訳して記事にしていくというのがよくあるパターン だ。移籍関連の話題などは、ぐるぐる回ってしまうため、最初の情報がどこなのか、行き着くのにひと苦労する場合もある。

 だが今回、香川についてエキサイトしているのはドイツメディアのほうだ。ヘルタ戦後、日本の報道陣はそろって静観の構えだった。ドルトムントクラスにな れば代わりの選手などいくらでもいる。前半戦は好調だった香川だが、ベンチ外もあり得るだろう、というのがほぼ共通した受け止め方だった。ところがトゥヘ ルの会見は香川の話題で白熱し始め、紹介したようなコメントが取りざたされることとなった。

 中2日で迎えたドイツ杯準々決勝シュツットガルト戦。移動日である試合前日は、ドルトムント空港でファンにサインする香川の写真がメディアを飾った。つまり、香川が今回は遠征メンバーに入った、ということが大きく報じられたというわけだ。

 試合ではベンチスタート。試合終了間際の87分に出場し、大きな見せ場もなく終わった。メンタル的なことに関し、「僕は(嫌なことを)引きずるタイプ」 と自ら言う香川は、どことなく元気がないように見えた。ぱっと見の印象にすべて現れるのが、香川の素直さ、分かりやすさだと思う。

 ドルトムントはこの日、少し布陣を変え、4-3-3からやや4-1-4-1に近い形で戦った。

ジュリアン・ヴァイグルが定位置を確保しているボラン チのアンカーにマティアス・ギンターを据え、左MFに本来はSBのエリック・ドゥルム、右MFにイルカイ・ギュンドアン。3トップはメンバーこそ変わらな いものの、トップにマルコ・ロイスが入り、右にオーバメヤン、左にミキタリアンという布陣だった。

 先週末のヘルタ戦では、香川と同じポジションをゴンサロ・カストロが務めた。そしてこの日はドゥルムがプレーした。テクニカルなカストロと、若くてス ピードのあるドゥルムといった別のタイプの選手が出場している。バイエルンに比べれば層が薄いとはいえ、彼らだって代表クラスの選手である。香川が安穏と していられないのは当然のはずだ。

 ではなぜドイツメディアで香川がここまで特別視されるのだろうか。ドルトムントの2連覇に貢献した選手だからか、プレミアリーグから戻ってきた選手だか らか、それともアジアマーケットに大きく影響を与える選手だからか。もちろん純粋に前半戦の活躍が記憶に新しいということもるだろう。誰も明確な答えは持 たないが、逆に今回の一件では、香川がドイツでいかに存在感のある選手かということが証明された。

 シュツットガルト戦の試合後、香川は報道陣の前に姿を現さないままスタジアムを後にした。週末はホームでのハノーファー戦。今度は、香川とドイツメディアはどのように対峙するのだろうか。

了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko


http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160212-00010001-sportiva-socc
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