1: YG防衛軍 ★@\(^o^)/ 2016/01/21(木) 20:57:28.53 ID:CAP_USER*.net
 日本のサッカーシーンでは、守備のブロックをセットしたとき、たとえば、FWの選手が相手のディフェンスラインからボールを奪おうと一人で闇雲にプレッシングを敢行し、あっさりと相手に交わされて、ぽっかりとFWと中盤との間にスペースを空けてしまう、といったシーンが散見される。Jリーグの試合然り、日本代表の試合然り、である。
 このとき、果敢にプレッシングにいって相手に剥がされてしまったFWの選手に、“自らが埋めるべき守備のスペースを空けてしまった”という感覚はあるだろうか。FWのプレッシングの判断がチームの守備のスイッチとなり、あるいは、FWが後ろからの声を頼りに守備のスイッチを入れ、後方の選手たちもそれに連動して前進し、FWがプレッシングによって空けたスペースを無理なく圧縮できればいいのだが、ときにFWのプレッシングの判断が闇雲に過ぎれば後方の選手たちが連動してアクションするのは困難だろう。
 ボクシング・ムーブメント、という言葉がある。ボクシングでパンチを打ったときには、打ちっ放しだとガードの隙を突かれてパンチを打ち込まれてしまうから、すぐにパンチした拳を自分の顔の前へ戻してガードを作る、というアクションの流れを指したものだ。これと同じことをサッカーの守備においても意識する必要がある。
ボールを奪いにいく(パンチを見舞う)のならば、同時に、(パンチを見舞ったときに)自身が空けたスペースも管理しようとする意識を働かせなければならない。
 プレッシングしようとするFWに求められるのは、首をふり、後方の味方の位置と、自分との距離感を確認する作業である。たとえば、自分がボールを奪いに行っても後方の選手たちがついて来られる距離感にあるならば、いざプレッシングをスタートする、逆にそのような距離感にない、あるいは、後方の選手たちの守備の準備ができていないようであれば、FWは迂闊にボールホルダーに飛び込まない、といった判断を下せるかどうかの守備の感覚が重要となる。

 そして、いざFWがプレッシングをスタートしたならば、後方の選手たちは、まずボールの位置、次に味方の位置に伴って連動しながらイワシの群れのごとく守備ブロックを移動させて、ピッチ上に余計なスペースを作らないように管理していく――これがゾーンディフェンスで守る際の基本的な考え方となる。

図1
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 かつてJリーグで福岡や神戸、栃木などの指揮官を歴任し、ゾーンディフェンスを駆使して守備組織を構築する、日本サッカー界の守備の第一人者・松田浩氏(日本サッカー協会技術委員)は近刊『サッカー守備戦術の教科書 超ゾーンディフェンス論』(カンゼン)のなかで、上記の守備の考え方をわかりやすく実践した参考例として、2013-14シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝ファーストレグ、4対0でバイエルン・ミュンヘンがバルセロナを粉砕した試合を挙げている。事例は少々古いものだが、守備の基本であり、普遍的な考え方を提示できるものなので紹介したい。
 バルセロナがディフェンスラインでボールを繋いでいるシーンがある。そのボールホルダーに対してバイエルンの1トップのゴメスや、2シャドーのミュラーやシュバインシュタイガーが前線まで顔を出してボールを奪いに行くふりをして行かない、という牽制を繰り返しながら様子を見ている【図1】。
前出の書籍のなかで松田氏はこう解説する。
「バイエルンはセンターサークルの頂点を基準にして、守備時にはゴメスとミュラー、あるいは、ゴメスと
シュバインシュタイガーが2トップの横並びになって守備ブロックの頂点を作るというイメージ。このラインが僕は至ってノーマルな守備ブロックの位置だと思っているのですが、バイエルンもこのラインをプレッシングのスタートラインと決めているのか、相手のボールホルダーに対して深追いをして交わされるようなことは絶対にしないです。どこかでプレッシングができるタイミングを図りつつ、視野外の視野で後方を確認しながら、自分がいるべき守備のポジションを各々がとっている」
 視野外の視野とは、首を振って確認できる視野のことだ。この試合ではシュバインシュタイガーらが視野外の視野でしきりに後方を確認し、周りの味方たちにスペースを指差しながら声をかけて、守備の役割分担を明確にしようとするアクションが覗える。

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