1: 3倍理論 ★ 2018/06/30(土) 07:14:13.15 ID:CAP_USER9
【カザン(ロシア)大島祥平】サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会で日本代表が決勝トーナメント進出を果たした。28日のポーランド戦では試合終盤の約10分間、後方でボールを回すことに終始する異例の策も取り、苦しみながら前評判の低さを覆して1次リーグを突破した。W杯開幕2カ月前の交代でハリルホジッチ氏から引き継いだ西野朗監督(63)の特徴が、チームの雰囲気や戦い方などに表れている。

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 ◇対話促し人心掌握

 W杯前、選手の間で西野監督の評価は高くなかった。西野監督はハリルホジッチ前監督時代の2016年3月、日本サッカー協会の強化責任者である技術委員長に就任。だが、監督として20年以上も現場一筋で、交渉、事務などの仕事には不慣れだった。「海外遠征にパソコンも持ってこず、映像も見ない。そんな人が監督かあ」。後任監督に決まった時、ある選手は言った。「自分たちでやるしかないね」

 西野監督は、まさにそんな選手たちの自主性を生かすことを考えた。「本来の力を出させたい」と宣言。前監督時代は指示や制約が多く、抑圧されていたピッチ内外での対話を促した。

 W杯直前の合宿でも当初は細かい指示をせず、ベテラン選手が口を出す様子を見ていることも多かった。話し合いもまとまらないまま時間が過ぎ「日本での合宿からモヤッとした感じでやってきてしまった」などの声も上がっていた。

 だが、徐々に人心を掌握。W杯直前の親善試合のパラグアイ戦。前半で不調だった乾貴士(ベティス)に「スパイクに何か入っているんじゃないか」と冗談を言ってリラックスさせると、乾は後半2ゴール。話し合いでも意見を集約するようになり、チームはまとまった。大会に入ると強く指示も出した。コロンビア戦のハーフタイムで、選手が引き分けでもいいと言うと「勝ち切れ」。リスクの高いオフサイドトラップ(相手が蹴る瞬間に守備ラインの位置を上げ、相手の最前線の選手をオフサイドの反則に陥れる策)を指示するなど、監督の気概に選手も背中を押された。

 吉田麻也(サウサンプトン)は「西野監督は勇気がある。最後の親善試合で先発メンバーを全員代えてみたり、大舞台でオフサイドトラップをかけてみたり」。穏やかでどこかつかみどころのない性格にも、昌子源(鹿島)は「淡々とクールで僕たちも落ち着ける。未知の人で、すごい」。度量の大きさが選手たちの力を引き出した。

 ◇「決断」報われるか?

 ポーランド戦後、西野監督は苦渋の表情で歯切れ悪く言葉を並べた。「非常に厳しい選択だった」「不本意です」

 負けているのにボールを回させて試合終了を待つ。セネガルが得点しないという他力に頼った策であったことも、監督の後ろめたい気持ちをより強くさせた。

 この試合は西野監督の勝負師の顔が出た。先発メンバーを2戦目までの主力から6人も入れ替えた。16強に進んだ過去2大会を「ここ(1次リーグ)の時点ですべて出し尽くして次に臨んでいた」と表現。今大会は目の前のことより、先の試合のために余裕を残そうと考えていたことがうかがえる。

 大胆な策は裏目に出た。初先発した山口蛍(セ大阪)は「試合にずっと出ていなかったので(暑い)気候でかなりしんどかった」と振り返る。後半14分に失点し、その時点で3位に転落する最悪の展開。だが同29分、セネガルも失点。2位で残れる状況になった。

 西野監督は22年前のアトランタ五輪で指揮し、1次リーグで2勝1敗の好成績ながら得失点差で敗退。その苦い経験から、今大会は「何が何でも勝ち上がりたい」と考えたのは当然だ。チームの状況を考え、日本が積極的に攻めても、得点して引き分けに持ち込む可能性より、余分な警告を受けたり、ミスから反撃されてさらに失点したりする懸念が大きいと判断したようだ。「ボール回し」を決断し、伝達役の長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)を入れたのが後半37分。ここまでの数分に西野監督の深い苦悩と、現実を見抜くリアリストの一面がにじむ。

 主力を休ませて勝ち上がり、結果的に成功とも言える。起用、采配ともに危険な賭けに出た西野監督。これまで日本が突破できなかった「16強の壁」を越えた時に、その決断は報われる。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180630-00000001-mai-socc

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