1: 2017/08/09(水) 22:43:28.54 ID:CAP_USER9
 インテルのオーナーである蘇寧グループが売上高2兆円という巨大資本(中国最大の小売業者)であるのに対して、ミランの株式を買収したロッソネーリ・スポーツ・インベスティメントは、オフショアのルクセンブルグに設立された資本金数十億円のペーパーカンパニーに過ぎず、新会長のリーも中国財界ではほとんど無名のいち投資家でしかない。ミランの買収と当座の強化・運営資金として必要だった7.4億ユーロ(約962億円/うちベルルスコーニへの支払いは5.9億ユーロ、ミランの強化・運営に1.5億ユーロ)のうち、オーナーの自己資金は2億ユーロ(約260億円)に過ぎなかった。残りは、中国のバッドバンク(不良債券処理会社)から2億4000万ユーロ(約312億円)、そしてアメリカのハゲタカファンド(破綻国家などをターゲットとする不良債権専門のヘッジファンド)であるエリオット・マネージメントから3億ユーロ(約390億円)を借り入れて、何とか帳尻を合わせた格好だった。クロージングが2度にわたって延期されたのも、資金繰りがつかなかったからだ。

 その理由としては、中国政府が昨夏以降、資金の国外流出に歯止めをかけるために、基幹産業ではない国外企業の買収に関わる資金移動を規制したため、リー会長が中国国内の機関投資家から集めた出資金がブロックされてしまったという説明がされている。これは事実かもしれないが、出資するはずだった銀行や企業が次々と撤退し、最後にはリー会長以外誰も残らなかったこともまた事実である。たとえ今後、中国政府が資金移動規制を緩和したとしても、撤退した投資家が戻ってくる保証はない。

 そして最大の問題は、エリオットから借り入れた3億ユーロを18カ月以内に約10%の利息をつけて返済できなければ、リー会長が保有しているミランの全株式が担保としてエリオットに没収されるという契約になっていることだ。

 この巨額の貸付と引き換えにエリオットがミランに役員として送り込んだパオロ・スカローニは、イタリアの国営エネルギー企業のトップを務め、2014年からはロスチャイルド投資銀行の副会長に就いている経営者で、以前からミランの少数株主の1人だった事実が示す通りベルルスコーニと極めて近い関係にある人物だ。もしリー会長が来年9月までに負債を返済できず、ミランの保有権がエリオットの手に渡ることになれば、ベルルスコーニがスカローニを通して何らかの形でミランに影響力を行使しようとするのではないか、という観測も出ている。

 実質的な経営トップであるファッソーネGDは、現経営陣によるミランのプロジェクトが軌道に乗るためには、来シーズン4位以内に入って18-19シーズンのCL出場権を確保することが生命線、と語っている。それに向けてすでに、CBムサッキオ(ビジャレアル)、ボヌッチ(ユベントス)、SBリカルド・ロドリゲス(ボルフスブルク)、コンティ(アタランタ)、MFケシエ(アタランタ)、チャルハノール(レバークーゼン)、ビリア(ラツィオ)、FWアンドレ・シルバ(ポルト)を獲得するなど、2億ユーロ近い補強資金を積極的に投じて、戦力強化が進められている。

 しかし、たとえCL出場権を獲得できたところで、売上高が2億ユーロ強、しかもこれまで毎年1億ユーロ近い赤字を垂れ流してきたミランが、1年半で3億6000万ユーロ(約468億円)のキャッシュを稼ぎ出す可能性はゼロに近い。だとすれば、何らかの形で返済のための資金調達ができない限り、18カ月後にミランはエリオットの手に渡ると考える方が、話の筋は通りやすい。エリオットは短期の投資で利ざやを稼ぎ出すことに特化したファンドであり、ミランの経営に興味を持つことはないはず。そうなるとその先は、別の資本家に売却というのが自然なシナリオだろう。

 どれだけ強力な戦力を整えたとしても、ハゲタカファンドへの借入金返済というピッチ外の大問題に解決のメドが立たない限り、今目の前を覆っている厚い霧が晴れることはないだろう。もしかすると、ファッソーネやスカローニはすでに霧の向こうに抜け出すための秘密の地図を手にしているのかもしれないが……。

サッカー_02

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170809-00010000-fballista-socc&p=2
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