1: YG防衛軍 2017/03/10(金) 18:53:03.54 ID:CAP_USER9

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9万6000人超の観衆が歌うイムノ(応援歌)が響き渡る。

[チャンピオンズ・リーグ 決勝トーナメント1回戦セカンドレグ]バルセロナ 6-1 パリSG/3月8日(水)/カンプ・ノウ
 
 殊勲のセルジ・ロベルトに選手達が次々とのしかかり、人の山ができる。
 
 ピッチ上ではベンチから飛び出した控え選手や監督、スタッフらが飛び跳ね、拳を突き上げ、抱き合い、各々に喜びを表現している。
 
 疑いながらも希望が芽生え、次第に期待が膨らみ、確信となりかけたところでどん底に突き落とされ、そして最後の最後にこの上ない幸福に満たされる――。
 
 これほど大きな感情の起伏をもたらした95分間が、かつてあっただろうか。
 
 3月8日、カンプ・ノウ。
 
 大音量のBGMに合わせて、アスルグラナ(青とえんじ色)とセニェーラ(カタルーニャ州旗)を合わせたフラッグが、スタンド中でゆらゆらと揺れている。
 
 試合開始10分前。すでにスタンドはほぼ満員だ。カンプ・ノウいっぱいに、9万6000人超の観衆が歌うイムノ(応援歌)が響き渡る。
 
 選手入場に合わせてバックスタンド上部から巨大なフラッグが現われ、「TOTS AMB L’EQUIP(皆がチームと共に)」の文字が浮かび上がる。ゴール裏の角にはフランス語で「ようこそカタルーニャ共和国へ」と綴られた横断幕も掲げられている。
 
 ブーイングに包まれたUEFAアンセムが流れ終わり、選手達がピッチへ散ってゆく。20時45分。不安と期待が入り混じる中、決戦が始まった。ファーストレグの0-4を引っ繰り返すための戦いが。
 
 バルセロナのシステムは予想通りの3?4?3。ラフィーニャとネイマールが両サイドの高い位置に張り出し、両CBと駆け引きを繰り返すルイス・スアレスとともに相手DFの押し上げを阻む。すぐにパリSGを自陣ペナルティーエリア手前まで押し込み、試合はハンドボールのようなワンサイドゲームに持ち込まれた。
 
 最初の歓喜は早々に訪れた。3分、スアレスのヘディングシュートがゴールラインを割り、早くもスタンドは総立ちになる。
 
 しかし、パリSGもルーカスがドリブルで敵陣への侵入を試みれば、11分にはユリアン・ドラクスラーのクロスがハビエル・マスチェラーノの手に当たり、あわやPKというシーンも。直後のCKでもボールがセルヒオ・ブスケッツの胸を強襲し、カンプ・ノウは立て続けに息を飲んだ。

17分にはネイマールのミドルシュートが僅かに枠を外れ、思わず「ウィー!」。その後もリオネル・メッシのFKはゴールの枠を捉えらず、ジェラール・ピケはヘッドを当てきれない。
 
 追加点への渇望が高まる中、21分には自陣右サイドでイバン・ラキティッチのパスがずれ、ルーカスの下へ。幸いシュートはマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンの胸に収まるも、チャンスを逸した落胆とピンチがもたらす恐怖の連続に、観衆の心拍数は確実に高まりつつあった。
 
「これは本当にいけるんじゃないか?」
 
 期待感が高まりはじめたのは、40分に2?0としてからだ。アンドレス・イニエスタのヒールキックがレーバン・クルザワのオウンゴールを誘発した直後、カンプ・ノウは「シー、セ、プエデ!(=Yes We Can)」の大コールに包まれた。
 
「そうだ、俺たちはやれる」
 
 クレ(バルサ・ファン)が抱いた奇跡への希望は、後半開始早々の50分にメッシがPKを決めたことで、いよいよ確信に変わりはじめた。
 
 それだけに、エディンソン・カバーニのゴールがもたらしたショックも大きかった。52分の決定機はポストに阻まれたが、さすがに二度目は外してくれない。62分、クルザワがラキティッチに競り勝って落としたボールを豪快に蹴り込まれた時点で、バルサは残り30分でさらに3ゴールが必要になった。
 
 失点の2分後。無理に仕掛けたネイマールのボールロストがカウンターを招き、カバーニがテア・シュテーゲンと1対1に。その2分後にはスアレスが大袈裟なシミュレーションで警告を受ける。失点の影響か、焦りからプレーが雑になりはじめた。
 
 並行してカンプ・ノウのスタンドも失点を機に夢から覚めたかのように自軍への応援を忘れ、ボールを持ち始めたパリSGと思い通りの笛を吹かないレフェリーに、神経質な口笛を浴びせはじめた。
 
「やはり不可能なミッションだったのか……」
 
 淡い希望は時間の経過とともに薄れゆき、とうとう残り時間はわずかに。88分、ネイマールがコースもスピードも完璧な直接FKをゴール左上角に突き刺す。あと2点。まだ希望の灯し火は消えかけたままだった。

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