1: Egg ★2017/01/03(火) 11:33:07.32 ID:CAP_USER9

no title

 
熱戦度、接戦度ともにハイレベル。急傾斜で知られる吹田スタジアムの良好な眺望と相まって、天皇杯決勝、鹿島対川崎は目の離せない好勝負になった。日本の国内サッカー史上ナンバーワンの試合だった可能性さえある。

鹿島はこの優勝で、Jリーグのクラブとして通算19冠を達成した。見出しに適したエピソードながら、クラブの伝統話を全面に優勝ストーリーを展開すれば、現在の魅力を伝える絶対量が減る。平凡な、ありきたりの優勝話になるどころか、的外れになりかねない。ブラジルに傾倒した過去の優勝と、今回の優勝とは、決定的に違うのだ。

正面からキチッと向き合わないと、日本サッカー界にとって損失に繋がる、価値の高い優勝だと思う。

この天皇杯を史上最高のレベルの試合に押し上げた最大の要因は、鹿島が披露した独得のサッカーにある。Jリーグ優勝、クラブW杯準優勝、そして今回の天皇杯。もし僕が海外在住者で、鹿島の試合を初めて観戦したなら、こう呟いていたと思う。

「このチームの監督って誰?」

監督の存在が偲ばれるサッカー。石井正忠監督の崇高な理念と、その理に叶った指導が、隅々まで行き届いた規律正しいサッカー。

ハイライトとなったクラブW杯決勝、対レアル・マドリーを観戦しながら想起したのはマドリーダービーだ。13-14、15-16のチャンピオンズリーグ決勝でR・マドリーと欧州一を懸けて争った関係にもあるアトレティコ・マドリーの姿だ。

勝って当然の王者に対して、アトレティコはなぜ互角以上に渡り合えるのか。その答えと同じ要素を、クラブW杯決勝でも見ることができた。

鹿島とアトレティコ。両者のサッカーは、すべて似ているわけではないが、強者である相手に攻め込まれてもパニックにならない、ダメージを食いにくい点で一致する。

ダメージを食っていれば、マイボールに転じた時に影響が出る。半分混乱しながら攻撃に転じれば、つまらないミスが起きやすい。悪いボールの奪われ方に繋がりやすいが、アトレティコと鹿島にはそうした瞬間が少ない。いいボールの奪われ方を、最後まで持続する力がある。そのための研究が尽くされていることが、吹田スタジアムのような鋭い視角のスタンド上階から俯瞰で眺めると、手に取るように分かるのだ。

クラブW杯決勝で、同点(2-2)にされた後の鹿島は、後半の終盤を迎えるにつれ、攻勢を強めた。ファブリシオや遠藤康が、惜しいシーンを作り出した。相手のR・マドリーの方に、悪いボールの奪われ方が目立つようになったからだ。こんなハズじゃなかったという焦りも手伝ったに違いないが、強者にこの症状が現れると、強者と弱者の差は接近する。これこそが、番狂わせが発生する一番の要因なのだ。

個人的なポテンシャルで上回る強者は、概してそこにこだわろうとしない。自信があるので、ボールの奪われ方を気にする前に、ゴールを決めることに欲が出る。だが、そうは言ってもサッカーは、1点差、2点差の勝負だ。同じカテゴリーの試合で4点以上開くことは滅多にない。

ゴールを決めることも大切だが、それ以上に大切なことは、正しく攻めること。それは攻撃の9割以上が失敗に終わるサッカーでは、正しいボールの奪われ方を意味する。正しいボールの奪われ方を続けることが、結果としてチャンスを生み出すことに繋がる。相手がそれを怠れば、よいボールの奪い方をするチャンスも生まれる。強者と弱者の差はいっそう接近する。番狂わせの要素が膨らむことになる。

両チームの印象、どちらが強者と弱者かは概ね、マイボール時の優劣が基準になる。どちらの方が地力でチャンスを作る攻撃力があるか。高いボール操作術を誇るか。

鹿島より川崎だろう。実際、川崎の攻撃は鹿島より迫力に富んでいるように見えた。選手のネームバリュー、一見、魅力的に見える選手の数もしかり。両者は、R・マドリーとアトレティコの関係にあった。何となく強そうに見える川崎に対して、鹿島はどう挑むか。鹿島が、R・マドリーにまさかの大善戦をした理由について探ろうとすれば、その食い下がり方に目を凝らすべきだった。

つづく

1/2(月) 22:19
http://bylines.news.yahoo.co.jp/sugiyamashigeki/20170102-00066176/

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