1: 2016/12/08(木) 22:04:40.55 ID:CAP_USER9
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3季連続でヨーロッパリーグ王者に輝いたセビージャ。今季はかつてチリ代表を率いたアルゼンチン人監督、ホルヘ・サンパオリのもと、サミル・ナスリを獲得して挑んだチャンピオンズリーグ(CL)だったが、グループリーグ突破は最終節のリヨン戦まで持ち越されていた。

 12月7日。濃霧のなか、アウェーでグループG3位のリヨンと対戦。2点差以上で敗れるとグループリーグ敗退という試合を、スコアレスドローで逃げ切った。

「グループリーグ突破が決まって、試合後のロッカールームが今までにないほどいい雰囲気だった。これから、リーグ戦、カップ戦、チャンピオンズリーグと、勝ち上がることでこういう雰囲気を味わえるんだと思ったら、ワクワクします」

 ベンチ入りしたものの出番のなかった清武弘嗣は、試合後、笑顔を見せた。

 今季、ドイツのハノーファーから移籍。開幕戦こそスタメン出場したものの、次第に試合出場から遠ざかり、「移籍か」とスペインメディアでも話題になっている。

「契約のこともあるし、僕が現時点で話すことはない。年内カップ戦も含めて3試合あるので、まずはそこに集中するだけ。新年も1月4日に試合があるので、いい準備をして臨みたい」

 大分トリニータ、セレッソ大阪、ニュルンベルク、ハノーファーと、プロ入り後は常にチームの中心選手として戦ってきた清武。しかし、ドイツの2チームでは2部降格を経験し、日本代表でもレギュラーポジションを獲得できずに伸び悩んできた。だからこそ、高いレベルで競うことで自身を飛躍させようとセビージャでの”レギュラー争い”にチャレンジした。

 その成果は10月、11月の日本代表戦で見せることができた。

 左アウトサイドでの起用で、FWとしての仕事を求められることもあり、ハリルホジッチ監督の目指すサッカーと自分のサッカーとのギャップに戸惑いを見せることもあったが、ゲームを作るという仕事ができる攻撃的MFとして、大きな存在感を示した。

「セビージャにはうまい選手がたくさんいるので、そういう中でもまれている日々は充実している。(移籍という)この決断は間違っていなかった」と言う。しかしその一方で、「試合勘や技術が衰えることはないけれど、試合で使う体力はやはり試合でしか身につかない。試合に出場できないと、徐々にそれが落ちていっているのかなという感じがある。そこが一番、悩むところです」とも語る。ただ、彼の表情や口調からは、”苦悩”につきものの暗さはなかった。

スペインに渡って半年。スペイン語の壁も清武を苦しめる一因になっているだろう。

「そうですね。監督の戦術はとても細かいので、すべてを理解できているわけじゃない。だから今日のような難しい試合、大事な試合では使ってもらえない。ドイツの時も最初はわからない部分があったけれど、試合には使ってもらえた。でも、今はチーム内での自分の立ち位置が違う。

 このチームにはいい選手がたくさんいるから。やっぱり完全に理解していないとチームに迷惑をかけることになる。そのあたりのことは苦労しているけれど、言葉は慣れていくものだと思っているし、カップ戦などで出場機会を重ねて、戦術も理解していきたい」

 そんな言葉にも不思議と明るさが漂っていた。むしろ「理解できていないから」とサラリと言い切る姿から、ある種の強さを感じた。

「どうして、試合に使ってくれないんだ」という思いだけでは、苦境は打開できない。できること、できていないこと。自分を見つめ、足りないところを探していく。そうやって、成長の糸口を見つける……そんな作業が清武を、少しずつ前へと歩ませているのかもしれない。他者との違いをアピールして強気を示すだけが、競争に勝つ方法ではない。多少遠回りになるかもしれないが、まずは謙虚に現実を受け入れる。それが清武の現在地と言えそうだ。
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